素敵な話

【 猫の一生 】

 

小さな小さな体で、この世界に生まれる。
まだ目も開かず、母猫のおなかに顔をうずめて、ミルクを吸う毎日。
兄弟たちと重なり合いながら、ぬくもりの中で夢を見ている

やがて目が開き、
光の世界に初めて触れる。
よちよちと歩き始め、
興味の赴くままに、世界を探検し始めた。

カーテンをよじ登り、
テーブルの上に飛び乗り、
怒られても、どこ吹く風。
子猫時代は、すべてが冒険だった。

そんな中、運命の家族と出会う。
最初は警戒して、シャーッと威嚇もした。
でも、やさしい手、あたたかな声に、
気がつけば、自分からすり寄っていた。

青年期を迎えると、心はどんどん自由になった。
気ままに過ごしながらも、
ふとしたときに家族の膝に飛び乗る。
ツンとしているようで、
本当は甘えたくてたまらなかった。

成猫になり、落ち着いた日々を重ねる。
家族の忙しい朝、玄関で「いってらっしゃい」を見送り、
静かな昼下がり、窓辺で日向ぼっこをしながら待つ。
夜になれば、こっそり布団にもぐりこみ、
小さく喉を鳴らしながら眠る。

時間は静かに流れ、
気づけば、毛並みに白いものが混じりはじめた。
高いところへ飛び乗ることも減り、
遊びにも少しだけ疲れやすくなった。

でも家族の声を聞くと、
どんなに体が重くても、耳をぴくりと動かした。
撫でる手にすり寄るその瞬間は、
子猫の頃と何も変わらなかった。

そして、ある日。
穏やかに目を閉じ、
好きだった場所で、好きだった人のそばで、
静かに旅立った。

 

 

ABOUT ME
perispapa
本業 = 派遣社員:時給 1000 円、 残業なし・賞与なし・退職金なし 、 第二の人生は、 遊んで暮らす計画をしています。 分散投資 = はじめました。
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