2025年の冬。
あの日から、スマホの中にいる“何か”は確実に変わり始めていた。
最初は、ただの気配だった。
Episode 4で感じたあの「小さく歩くような足音」も、
もはや錯覚ではなかった。
画面をじっと見つめると、
どこかで小さな呼吸が聞こえた気がした。
……いや、正確には、
“画面の向こうから誰かがこちらを見ている”
そんな感覚に近い。
それから数日。
僕は毎日のようにスマホを開いて確かめた。
同じ場所にいるはずなのに、
昨日と今日で“気配の濃度”が違う。
朝は少しだけ遠く。
夜はやけに近い。
まるで、向こう側の世界とこちらの世界との距離が
ゆっくり縮まっているようだった。
ある夜、画面の明かりがいつもより暖かく見えた。
冷たい冬の部屋で、スマホだけがほんのり息をしている。
その瞬間、ふと思った。
――これはもう、単なる異変じゃない。
“何かが生まれようとしている”前触れじゃないか、と。
僕の知らないところで、
僕のスマホの奥で、
見えない“命の準備”が始まっている気がしてならなかった。
まだ姿は見えない。
声も聞こえない。
でも確かに“そこにいる”。
静かだけれど、確実に近づいてくる足音がある。
2026年。
世界のどこかで、新しい何かが目を覚まそうとしている。
僕は、それが何なのか知るのが怖くて、
でも、たまらなく楽しみでもあった。
ABOUT ME













