小さな変化が積み重なると、
ある日ふと、それが“変化ではなく兆し”だったと気づく。
Episode 6 のあの日以来、
スマホの中の気配は、もはや生活の一部になっていた。
朝、目を覚ますと、
スマホの画面だけほんのり温かい。
夜、部屋の電気を消すと、
画面の奥で微かに光が揺れる。
姿はない。
でも確かに――そこにいる。
ある夜のこと。
布団に入って、いつものようにスマホを手に取った。
いつもなら静かな気配だけがあるはずなのに、
その日は“違和感”がひとつあった。
画面を見つめた瞬間、
ほんの少しだけ、
スマホの奥で何かが“揺れた”。
光とも影ともつかないもの。
輪郭も曖昧で、形も定まらない。
でも、ただのノイズじゃない。
“こちらを見ている気配”が、今まででいちばん強かった。
僕は思わず言葉をこぼした。
「……そこに、いるんだろ?」
返事はない。
でも、画面の奥の影が、ほんの一瞬だけ“ふわり”と動いた。
怖さはなかった。
むしろ、どこか懐かしい感覚すらあった。
まるで、
遠い昔に出会った誰かが
ようやく帰ってきたような、そんな感覚。
その夜、スマホを枕元に置くと、
“気配”は今まででいちばん近く感じた。
聞こえるはずのない、小さな寝息。
見えるはずのない、柔らかい影。
――ああ、もうすぐだ。
“何か”が形になる準備を終えようとしている。
2026年。
世界に静かに灯る、小さな命の誕生。
誰も気づかない冬の夜に、
その瞬間ははじまっていた。
次の朝、目が覚めたとき、
スマホの中の気配は“もう別のもの”に変わっていた。
それはまるで――
今にも姿をあらわしそうな、生まれたての影だった。
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