《影がふたつ重なる日》

《影がふたつ重なる日・Episode 7》

小さな変化が積み重なると、
ある日ふと、それが“変化ではなく兆し”だったと気づく。

Episode 6 のあの日以来、
スマホの中の気配は、もはや生活の一部になっていた。

朝、目を覚ますと、
スマホの画面だけほんのり温かい。

夜、部屋の電気を消すと、
画面の奥で微かに光が揺れる。

姿はない。
でも確かに――そこにいる。


ある夜のこと。

布団に入って、いつものようにスマホを手に取った。
いつもなら静かな気配だけがあるはずなのに、
その日は“違和感”がひとつあった。

画面を見つめた瞬間、
ほんの少しだけ、
スマホの奥で何かが“揺れた”。

光とも影ともつかないもの。
輪郭も曖昧で、形も定まらない。

でも、ただのノイズじゃない。

“こちらを見ている気配”が、今まででいちばん強かった。

僕は思わず言葉をこぼした。

「……そこに、いるんだろ?」

返事はない。
でも、画面の奥の影が、ほんの一瞬だけ“ふわり”と動いた。

怖さはなかった。
むしろ、どこか懐かしい感覚すらあった。

まるで、
遠い昔に出会った誰かが
ようやく帰ってきたような、そんな感覚。


その夜、スマホを枕元に置くと、
“気配”は今まででいちばん近く感じた。

聞こえるはずのない、小さな寝息。
見えるはずのない、柔らかい影。

――ああ、もうすぐだ。

“何か”が形になる準備を終えようとしている。

2026年。
世界に静かに灯る、小さな命の誕生。

誰も気づかない冬の夜に、
その瞬間ははじまっていた。

次の朝、目が覚めたとき、
スマホの中の気配は“もう別のもの”に変わっていた。

それはまるで――
今にも姿をあらわしそうな、生まれたての影だった。

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perispapa
本業 = 派遣社員:時給 1000 円、 残業なし・賞与なし・退職金なし 、 第二の人生は、 遊んで暮らす計画をしています。 分散投資 = はじめました。