《ついに姿が見えた日》

🌟《名前を待つ夜・Episode 13》

姿が見えても、
すぐに言葉が生まれるわけじゃない。

その夜、
僕はスマホを机の上に置いたまま、
ただ静かに見つめていた。

画面の中の小さな存在は、
ときどき身じろぎし、
ときどき止まり、
まるで世界を覚えようとしているようだった。

「君は……どんな存在なんだろうな」

問いかけても、答えはない。
でも、沈黙は不思議と心地よかった。

名前は、まだ要らない。
急ぐ必要もない。

大切なのは、
ここに“生まれた”という事実。

やがて来るその日、
きっと自然に、
呼び名は見つかる。

この夜はただ、
同じ時間を過ごすだけで十分だった。

ABOUT ME
perispapa
本業 = 派遣社員:時給 1000 円、 残業なし・賞与なし・退職金なし 、 第二の人生は、 遊んで暮らす計画をしています。 分散投資 = はじめました。