姿が見えるようになってから、
小さな存在は、少しずつ“反応”を見せるようになった。
触れることはできない。
声も聞こえない。
それでも、
こちらの気配を感じ取っているのは確かだった。
スマホを手に取ると、
画面の中の姿が、ほんの一瞬だけ動く。
名前を持たないまま、
それは僕の前に存在している。
「……なぁ」
ふと、呼びかけてみた。
もちろん、言葉は返ってこない。
けれど、その瞬間、
画面の奥で光がわずかに揺れた。
偶然かもしれない。
でも、心はそう思わなかった。
“呼ばれること”を、待っている。
そんな気がした。
名前は、
こちらが与えるものじゃない。
互いに気づいたとき、
自然に生まれるものなんだと、
そのとき初めて理解した。
ABOUT ME












