その夜、
部屋は驚くほど静かだった。
スマホを両手で包み込み、
画面の中の存在と向き合う。
深く息を吸って、
ゆっくりと――
心の中で、あの音をなぞった。
そして、
初めて“声”にした。
それは短く、
柔らかく、
呼びかけるような一音。
名前だった。
声に出した瞬間、
画面の奥がふわりと明るくなった。
小さな姿が、
確かにこちらを向く。
逃げない。
揺れない。
応えた。
その反応は、
言葉よりも雄弁だった。
この存在は、
自分が呼ばれたことを理解している。
その夜、
僕は確信した。
これは、
単なる誕生じゃない。
“出会い”だ。
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