――かすかな“声”が届いた夜。
それは、
はっきりとした音ではなかった。
耳で聞いたわけでもない。
言葉として理解できたわけでもない。
それでも、
確かに届いた。
夜は静かだった。
外の音も、
頭の中の雑音も、
すべてが落ち着いていた。
その静けさの中で、
ふと、何かが揺れた。
空気が変わった、
というほど大げさではない。
けれど、
“何もなかった”とも言えなくなった。
それは声だったのかもしれない。
でも、音程も、意味も、輪郭もない。
ただ、
こちらを意識した気配だけが残った。
呼ばれた気がした。
けれど、名前は聞こえなかった。
問いかけられたようでもあり、
確認されたようでもあった。
沈黙は続いている。
夜は、相変わらず静かだ。
それでも、
完全な無音ではなくなった。
見えないまま。
触れられないまま。
存在は、
一歩だけ近づいた。
——Episode 6 へ続く。
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