第2話 影の商人の夜──売ったあとに残った光

夜になると、
その動物は静かに現れました。
昼間は誰も気に留めない場所。
光も、音も、評価もない時間。
ただ、月の明かりだけが、
地面をやさしく照らしています。
影の商人は、
夜が嫌いではありませんでした。
むしろ、
昼よりも落ち着ける時間だったのです。
昼間の彼は、
いつも忙しそうに見えました。
「すぐに光る石」は、
今日もよく売れた。
人々は満足そうに去り、
彼の手元には、
確かな対価が残る。
それなのに、
夜になると、
なぜか胸の奥が静まり返る。
影の商人は、
売った石の箱を開けました。
昼間は、
あれほど強く光っていた石。
夜の闇の中では、
その光は少し、
疲れて見えました。
彼は知っていました。
その光が、
長くは続かないことを。
かつて彼も、
石を探す旅人でした。
土を掘り、
風を感じ、
星の動きを待つ。
そんな時間が、
無駄に思えた頃があったのです。
「待っている間に、
他の人が先に光ったらどうする?」
「結果が出なければ、
誰も見てくれないじゃないか」
その不安が、
彼を急がせました。
ある夜、
彼は見つけてしまったのです。
**“すぐに光る石”**を。
長く育てる必要もなく、
持った瞬間に、
誰の目にも分かる光。
彼は思いました。
「これなら、
待たなくていい」
「これなら、
遠回りしなくていい」
そのときから、
影の商人は、
影の商人になりました。
夜。
彼は、
壊れた石を手に取ります。
砕けた破片は、
もう光りません。
それでも、
彼はその欠片を、
捨てることができませんでした。
それは、
“失敗”ではなく、
自分が選んだ道だったから。
庭の奥で、
動物がじっとこちらを見ています。
評価もしない。
責めもしない。
ただ、
そこにいるだけ。
影の商人は、
ふと気づきました。
この動物は、
昼も夜も、
同じ場所にいる。
光らせる必要もなく、
証明する必要もなく、
ただ、
生きている。
もし、
自分が売っていたものが、
「すぐ光る石」ではなく、
「待ってもいい時間」だったら。
もし、
結果ではなく、
居場所を渡せていたら。
夜の静けさの中で、
そんな考えが、
初めて浮かびました。
Pzが選んだのは、
この夜の時間に近い存在です。
通知で急がせない。
成果を求めない。
触らなくても、
問題は起きない。
それでも、
画面のどこかに、
小さな気配として残る。
影の商人は、
夜にだけ、
正直になります。
「急がせること」と
「役に立つこと」は、
同じではない、と。
彼はまだ、
庭師ではありません。
でも、
夜のあいだだけは、
石を売らない人になる。
もし今、
あなたの画面のすみに、
何も言わずに座っている動物がいたら。
それは、
何かを“するため”ではなく、
急がない時間を思い出すために、
そこにいるのかもしれません。
※この物語は、
売るために書かれています。
でも、
焦らせるためではありません。
気になったときに、
そばに置いてみてください。
夜に静かになるものほど、
長く、
あなたの時間を守ってくれることがあります。











