枯れた花と、消えない香り
usasin

かつて庭師を「要領が悪い」と笑った旅人が、ボロボロの靴を履いて再び「Pzの庭」を訪れました。彼の背負った袋には、かつて大金で買った「魔法の粉」の空き瓶が詰まっていました。
「庭師さん、教えてくれ」旅人は力なく地面に座り込みました。「あんなに早く咲いた花が、どうして一晩で枯れてしまったんだ? 肥料も水も、言われた通りにやったのに」
庭師は、芽吹いたばかりの小さな苗に優しく土を被せながら答えました。 「魔法の粉は、花に『咲け』と命令するものです。でも、庭仕事で一番大切なのは、花を咲かせることではなく、『根が張りたくなる土』を作ることなんですよ」
旅人は不思議そうな顔をしました。 「土なんて、どれも同じじゃないのか?」
「いいえ。土には、これまでの雨や風、そして注がれた時間の記憶が眠っています。急いで咲かせた花は、外側の華やかさだけを急いで作り、土と対話するのを忘れてしまった。だから、少しの風で倒れてしまったんです」
庭師は傍らで丸くなっている愛犬のテツと、蝶を追いかける愛猫のペリに目を細めました。 「近道は景色を飛ばしてしまいます。でも、ゆっくり歩けば、足元の小さな石や、風の匂いの変化に気づける。その気づきの一つひとつが、実は一番の栄養なんです」
旅人は、庭師が差し出した一杯の温かいコーヒーを受け取りました。その香りは、魔法の粉では決して作ることのできない、深くて優しい安らぎに満ちていました。
「明日から、僕も土を触ってみてもいいかな?」 旅人の言葉に、庭師は静かに頷きました。
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このブログでは、
日常の中でそっと心に残る言葉を
記録しています。 前向きにならなくてもいい。
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そんな気配の延長です。 公式アプリ Pocket Zoo(Pz) の
世界観とも、静かにつながっています。










