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小さな小さな命が、この世界に生まれる。
まだ目も開かず、母犬のぬくもりに包まれて眠る。
兄弟たちと身を寄せ合いながら、ほんの少しずつ、世界を知っていく。
やがて、目を目が開き、初めて見る世界に戸惑いながらも、無邪気に走り出す。
ボールを追いかけ、葉っぱにじゃれ、知らないものには吠えてみる。
すべてが新鮮で、すべてが楽しい。
そんな日々の中で、「家族」と出会う。
抱き上げられたぬくもり。
名前を呼ばれるたびにしっぽを振り、
家族の笑顔を見るたびに胸を弾くだ。
少年のようにやんちゃで、時に叱られ、
でも誰よりも家族を愛した。
成長すると、体も心もたくましくなった。
家を守り、家族を守り、
悲しい日も、嬉しい日も、
そっとそばにより添った。
散歩が何よりの楽しみだった。
家族と並んで歩く道が、世界で一番素敵な場所だった。
やがて、走る速度が少しずつゆるやかになった。
白い毛が混じり、耳も遠くなった。
それでも、家族の声はちゃんと届いていた。
たとえ足腰が弱っても、
「おかえり」の声にしっぽを振ることは忘れなかった。
たくさんの季節を一緒に越えて、
たくさんの思い出を抱えて、
静かに、その日が近づいてきた。
最後の日も、優しい手の中で、
愛する人たちのにおいに包まれて、
大きな深呼吸をひとつして、
ありがとう、を胸に旅立った。
犬の一生は、人間よりずっと短い。
だけど、その一瞬一瞬は、
愛する人を思う気持ちでいっぱいだった。
「あなたに出会えてよかった。」
そう思いながら、生涯を閉じた。
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