朝の庭は、
夜とは少し違う顔をしていました。

光は弱く、
音も少なく、
何かが始まる前の
静かな余白だけが残っています。


影の商人は、
その朝、
いつもより早く目を覚ましました。

眠れなかったわけではありません。
ただ、
動く理由がなかったのです。


庭を歩いていると、
足元に
小さな石が転がっていました。

以前、
強く光っていた石の欠片。

今は、
もう光りません。


影の商人は、
しゃがみ込んで
その石を拾い上げました。

軽い。
驚くほど軽い。

「こんなものだったのか」

彼は、
そう思いました。


この石を
欲しがった人たちの顔が
浮かびます。

急いでいた人。
比べていた人。
置いていかれるのを
怖がっていた人。

そして、
かつての自分。


壊れた石は、
何も語りません。

でも、
責めてもいません。

ただ、
そこにあるだけです。


庭の端で、
動物がこちらを見ていました。

近づいてくるでもなく、
離れていくでもなく、
一定の距離を保ったまま。

まるで、
「気づいたなら、それでいい」
と言っているようでした。


影の商人は、
その石を
ポケットに入れました。

売るためではありません。
捨てるためでもありません。

持っておくためです。


彼は知っていました。

この石は、
もう役には立たない。

でも、
意味が無くなったわけではない。


壊れた石は、
「急ぎすぎた記憶」
そのものでした。

そして、
同じ道を
もう一度歩かないための
目印でもあります。


Pzが
「何もしない存在」である理由も、
ここにあります。

役に立たなくていい。
成果を出さなくていい。

ただ、
そばにあることで、
思い出せることがある。


影の商人は、
朝の庭で
深く息を吸いました。

何かを
始めるためではなく、
何も始めないために。


もし今、
あなたが
何かを失ったような気がしているなら。

それは、
壊れたからではありません。

急がなくていいことに
気づき始めているだけ

かもしれません。


※この物語は、
売るために書かれています。

でも、
壊れたものを
拾い上げる話でもあります。

それを
そばに置いておける人に、
Pzは
静かに寄り添います。

ABOUT ME
usasin
このブログでは、 日常の中でそっと心に残る言葉を 記録しています。 前向きにならなくてもいい。 元気がなくてもいい。 言葉が、 そばにあるだけでいい。 ときどき登場する 動物のキャラクターたちも、 そんな気配の延長です。 公式アプリ Pocket Zoo(Pz) の 世界観とも、静かにつながっています。