その日は、
特別な出来事があったわけではありません。

空はいつもどおりで、
庭も変わらず静かでした。

それでも、
影の商人にとっては
初めての一日でした。


彼は、
立ち止まりました。

売るためでも、
探すためでもなく、
ただ、
庭を見ていたのです。


これまで彼が見ていたのは、
人の視線でした。

欲しがる顔。
比べる目。
結果を急ぐ背中。

庭は、
その背景でしかありませんでした。


でも、その日は違いました。

土の色。
影の伸び方。
風が通る音。

今まで
見えていなかったものが、
そこにありました。


庭は、
何も主張していません。

「急げ」とも
「頑張れ」とも
言わない。

ただ、
そこにある。


影の商人は気づきました。

この庭は、
成果を出す場所ではない

それでも、
人が戻ってくる場所だ。


遠くで、
動物が座っています。

何かを期待しているわけでも、
見張っているわけでもありません。

ただ、
同じ時間を
共有しているだけです。


影の商人は、
初めて
“売らない時間”を
過ごしました。

その時間は、
お金にも、
評価にも、
変わりません。

それなのに、
なぜか
奪われる感じがしなかった。


庭は、
人に何も与えません。

でも、
何も奪いません。


Pzが
「何もしない存在」である理由も、
この庭と同じです。

役に立たなくていい。
使われなくてもいい。

それでも、
そばにあることで、
人を戻す


影の商人は、
その日、
初めて理解しました。

光るものを
売ることよりも、

戻れる場所を
残すことのほうが
価値がある
ということを。


もし今、
あなたが
何かを終えたあとで、
立ち止まっているなら。

それは、
遅れているのではありません。

戻っているのです。


※この物語は、
売るために書かれています。

でも、
売らない時間の話でもあります。

それを許せる場所として、
Pzは
静かに存在しています。

ABOUT ME
usasin
このブログでは、 日常の中でそっと心に残る言葉を 記録しています。 前向きにならなくてもいい。 元気がなくてもいい。 言葉が、 そばにあるだけでいい。 ときどき登場する 動物のキャラクターたちも、 そんな気配の延長です。 公式アプリ Pocket Zoo(Pz) の 世界観とも、静かにつながっています。