病気に苦しんだり、対人関係に悩んだり
家族の問題に頭を抱えたり、恋愛に破れたり。
そんなとき、私はこう言いたいのです。
「 どうってことありゃしない。生きていればどうにかなるわい。
ドンマイ・ドンマイ! 」
目の前に壁ができたときに、泣いたりわめいたり愚痴をいったり
しても、けっして答えは見つかりません。
感情的になることは、かえって解決の邪魔をするのです。
では、何が解決の手助けをするのかといえば、
それは「 理知(りち)」だけなのです。
はじめに壁ができた原因を冷静に分析して、つぎに壁は高いのか、
それとも低いのか、厚いのか薄いのかを考察する。
そしてどうすれば乗り越えられるのか、効果的な対策を一つだけで
はなくいくつも考えて行動におこす。
初の案がダメなら次の案にとりかかる。
これが、冷静に考えるということなのです。
問題を解決するためには、一歩も二歩もひいて客観的にとらえること。
この客観性は、理性以外のなにものでもありません。
そして、もう一つ、解決の手助けになることがあります。
それは、「 感謝する 」ということです。
たとえば、誰でもまわりに「 イヤだな、こいつ 」と思う人がいるで
しょう?
でも、その人のおかげと思えることが、ささいなこともあるん
じゃないかしらと探してみれば、自分になんらかの益をもたらし
てくれていることが必ずはずなのです。
問題解決の妨げになる悪想念をいかに追い払うか、たとえ完全に
追い払えなくても軽くするためには、少しずつでも「 感謝する 」
ことを訓練するのです。
この人のおかげで何かプラスに働いていることがあるかもしれない
感謝することがあるかもしれないと考えて、それが見つけられた時
には、気持ちはすーっとラクになって、「 大嫌い! 」と思っていた
のが、そうでもなくなってきますから不思議なものです。
とにもかくにも、過去に思いつめた経験がある人も、いままさに思
いつめている人も、共通しているのは、生きているということです。
なんだかんだいっても、いまこの時間を生きていますし、生きてこ
られたわけでしょう?
そう考えれば、ジタバタしてきたことは、まるでコメディのよう
じゃありませんか。
心がすさんで、ノイローゼになるくらいに思いつめた日々は、
振り返ればぜーんぶ杞憂(きゆう)で、取り越し苦労にすぎな
かったのです。
その時その時で見れば、人生は辛くて悲しい悲劇のようにも思える
時があるが、長い時間がたってそのことを後から考えてみると、
あれはドタバタの喜劇の主人公だったということでしょう。
気にしなさんな。
終わりよければすべてよし!
だから、人生はドンマイ・ドンマイ!
「 どうってことありゃしない。生きていればどうにかなるわい。
ドンマイ・ドンマイ! 」
ドタバタの喜劇の主人公を、感謝の気持ちで元気に演じたい。
美輪明宏