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ホンダの創業者、本田宗一郎はある日、
あっさりと代表の座を降りた。
その後、彼は全国行脚の旅に出る。
全国のホンダの営業所、工場を訪れ
社員一人一人に挨拶し、
握手を交わしたいと言い出したのだ。
それが社長を辞める際の
彼の唯一の願いだった。
飛行機、車、新幹線を乗り継いで、
彼は全国どころか外国も含め、
1年半ですべてを回りきった。
ある工場で宗一郎氏と握手する前に
急いで走り去ろうとするものがいた。
「 どうした? 」
そう呼び止めると
「 手が汚れているから 」
と油で真っ黒になった手を
隠しながらもぞもぞしている。
だが宗一郎は、
「 いいんだよ、それでいいんだ 」
と彼の真っ黒な手を握り締めた。
「 働いている手じゃないか、
立派な手だ。俺はこういう手が一番好きだ 」
そういいながら涙ぐむ
宗一郎氏と一緒に社員も涙を流した。
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